彼の症例は八日間、何の疑いももたれなかったが、そのときにはすでに彼は重症になっていた。
やっとその時点になって彼は詳しく質問され、事の経緯が明るみに出た。
彼は二週間前にナイジェリアで母の葬式に出席し、その十日後に父が死んでいた。
両親とも、彼の病気とよく似た病気にかかっていたという情報は、警報ベルであった。
彼の病気はラッサ熱であった。
その診断がなされてまもなくして彼は死んだ。
しかし彼は病気の間おそらく非常に高い感染力をもっていたはずである。
彼は一0二人の人間と接触していた。
全員が追跡されたが、幸運なことに一人も発病していなかったのである。
驚くべきことに、エボラやラッサ熱にかかった人たちの恐ろしく高い死亡率は、この種のウイルスが広範な流行病を引き起こさない、ということを意味している。
その理由は、彼らウイルスが感染した人たちの大部分を急速に無能力にし、一、二週間以内に患者を死に追いやってしまうからである。
もし彼らが人間の体内で生き延びようとするならば、これよりも速く広がるしか方法はない。
そのようなことは、直接接触によって広がるウイルスにとって現実的な提案とは言えない。
したがって、彼らは典型的に、爆発的であるが、局所的な流行を引き起こすのである。
もし彼らが麻疹ウイルスやインフルエンザウイルスのように吸入によって広がることができたならば、あるいはHIVのように長い沈黙の潜伏期間をもっていたならば、話はまったく違ったものになっていたであろう。
狂犬病は古くからある非常に致死性の強いウイルスである。
この病気は、ひとつの宿主から他の宿主へ伝達されるためには動物の噛みつくという行為に頼らなければならないにもかかわらず、現代まで何とか生き延びている。
狂犬病はその犠牲者を数日続く発狂状態へと巧みに追いやる。
その間にその動物の唾液はウイルスで満たされる。
このウイルスは、感染した噛み傷から皮膚の神経に沿って長い旅行を開始し、脳に通じる神経線維を上がってゆく。
旅行中、ウイルスはまったく何の症状も引き起こさない。
傷は治り、すべてが順調に見える。
ところが七日から数年(最初の噛み傷から中枢神経系までの距離によって決定される期間)ののち、ウイルスは脳に達する。
ここでウイルスは炎症(脳炎)を引き起こし、奇妙な行動の変化を誘発する。
野生の狼はふつう孤独で内気な動物であるが、他の狼の仲間を探し出すか、あるいは人間の住居に接近するようになる。
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